痙縮の治療
藤岡 裕士脳神経外科 / 神経内科
【所属学会・資格等】
- 脳神経外科専門医
- 脊椎脊髄外科専門医
- 日本脊髄外科学会認定医
- 日本定位・機能神経外科学会技術認定医
- ボトックス,ゼオマイン施行医
- バクロフェンポンプ施行医
痙縮
痙縮(けいしゅく)とは
脳性麻痺、脳卒中、脊髄損傷により、麻痺側の手足の関節や筋肉が固くなる状態のことです。原則として痙縮は上肢では曲がる方向(屈曲位)、下肢では伸びる方向(伸展位)に生じます。痙縮が強くなると関節の痛みのほか、関節が動かないことで着替えや入浴などの日常生活に支障が出てきます。痙縮が進むと関節が固まり拘縮(こうしゅく)と呼ばれる状態になります。
当院では、患者様の状態に応じてボツリヌス治療、バクロフェンポンプ療法(ITB療法)、DREZotomyなどの治療を行っています。
治療法
ボツリヌス治療
ボツリヌス治療(ボトックス、ゼオマイン)は12週間ごとに筋肉内に注射を行います(ゼオマインは10週ごとの投与可)。リハビリをあわせて行うと効果が出やすく、当院では外来・入院リハビリに対応しています。ボツリヌス治療は保険適応の治療ですが、高額なことから身体障がい者手帳1~2級の方が主な対象となります。ご希望の方は医師にご相談ください。
メリット
- 筋肉注射のため手技が手軽
デメリット
- 費用が高額(ただし障害者手帳1~2級の方はほぼ負担なし)
- 約3ヶ月毎に注射を繰り返す必要あり
- 痙縮が広範囲の場合、カバーできないことがある
バクロフェンポンプ療法(ITB療法)
重度の痙縮に対して行う保険適応の手術法です。脊髄にカテーテルを留置しバクロフェンという薬剤の入ったポンプを腹部に埋め込みます。バクロフェンを持続的に投与するため、3~4ヶ月に1回程度、外来にてポンプ内の薬液を補充する必要があります。
担当医は長年バクロフェンポンプ療法に取り組んでおり、手術、薬液補充ともに可能ですが、フォロー体制を含め術前に十分な話し合いが必要となります。
メリット
- 広範囲の痙縮に対応可
- 痛みの改善効果を認めることがある
デメリット
- 正常側の筋力も低下してしまう(とくに片麻痺の方)
- 3~4ヶ月に1回程度、ポンプ内の薬液交換が必要
- 腹部手術時は消化器外科医と脳神経外科医との調整が必要
- ポンプ内薬液の急な中断で悪性症候群などの重篤な合併症を生じうる