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難治性疼痛の治療

藤岡 裕士脳神経外科 / 神経内科
【所属学会・資格等】
  • 脳神経外科専門医
  • 脊椎脊髄外科専門医
  • 日本脊髄外科学会認定医
  • 日本定位・機能神経外科学会技術認定医
  • ボトックス,ゼオマイン施行医
  • バクロフェンポンプ施行医

難治性疼痛

難治性疼痛とは

麻薬を含めた内服薬やブロック注射などでも治りにくい疼痛のことを難治性疼痛(なんちせいとうつう)と呼びます。外傷、手術、脳卒中などの後に出現する厄介な痛みです。三叉神経痛も難治性疼痛に入りますが治療法は他と少し異なります。テグレトールなどの薬やブロック注射でコントロール不良の場合、微小血管減圧術やガンマナイフなどの放射線療法を検討します。
治療としては脊髄刺激療法、DREZotomy(ドレゾトミー)のほか、Myelotomy(ミエロトミー)、運動野刺激療法などの手術治療があります。

なお、難治性疼痛は精神・心理的要因が関与していることがあります。線維筋痛症などの診療科横断的な治療が必要な病気のこともあるため、適宜専門の医療機関を紹介いたします。

治療法

脊髄刺激療法(SCS)

SCS(エスシーエス)は難治性疼痛に対する保険適応の治療法です。局所麻酔で行なえる低侵襲な手術法で、概ね疼痛が半分程度に改善します。近年、SCSの新たな刺激方法や装置が開発されており、これに伴い疼痛改善効果が改善しています。脊髄の硬膜外腔という部位に細い電極を挿入し、腰部や腹部に埋め込んだ刺激装置から弱い電気刺激を流すことで痛みを抑えます。場合によっては脊椎(椎弓)を部分切除のうえ、幅の広いパドル型電極を埋め込むこともあります。
この数年来、脊椎疾患に対するSCSの施行例が増えています(頚椎症、腰椎症の術後、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、胸腰椎破裂骨折など)。腰椎や頸椎に対する脊椎手術でも治らない疼痛患者さんのほか、高齢や全身状態不良にて全身麻酔手術(除圧術や固定術)ができない患者さんが増えてきており、そのような方にSCSは良い適応になります。
私は脳神経外科専門医のほか脊椎脊髄専門医として脊椎手術とSCSの両治療に実績があります。当院で力を入れている治療法ですので、興味のある方は担当医にご相談ください。

脊髄刺激療法(SCS)

SCS施行例。
通常2本の刺激電極を硬膜外腔に留置します。

メリット
  • 侵襲度が低い
  • 局所麻酔で手術が可能なため,全身状態が不良な方にも施行可
  • 疼痛が主体の頚椎症、腰椎症の方に有効
  • 脊椎手術後も治らない疼痛に有効なことが多い
デメリット
  • 刺激装置と電極を埋め込む必要あり
DREZotomy(脊髄後根進入部遮断術)

DREZotomy(ドレゾトミー)は顕微鏡下で脊髄の後根進入部を選択的に遮断することで難治性の疼痛を改善する手術です。脊髄損傷後の疼痛や癌性の疼痛に効果があります。

メリット
  • 特定の疼痛で効果が高い(神経引き抜け損傷など)
デメリット
  • 侵襲度が高い
  • 予期しない神経脱落症状出現のリスクあり
  • すべての疼痛に効果がある訳ではない
Myelotomy

Myelotomy(ミエロトミー)は難治性の内臓痛(腹部痛)に対して行う治療法です。脊髄の中で内臓痛が走行する部位を選択的に切断します。腹部の癌などで麻薬でも効果のない疼痛の改善に効果があります。特殊治療のため適応については十分な話し合いが必要です。

メリット
  • 内臓痛に対する改善効果が高い
デメリット
  • 予期しない神経脱落症状出現のリスクあり
運動野刺激療法(MCS)

運動野刺激療法(MCS)は脳卒中後などの中枢性の難治性疼痛に対して行われる治療法です。脳の中の第一次運動野という部位の硬膜上に刺激電極を留置し、微小な電気刺激を与えることで疼痛が約半分程度に改善します。特殊治療のため適応については十分な話し合いが必要です。

メリット
  • 中枢性疼痛に対する効果が高い
デメリット
  • 侵襲度が高い
  • 手術後はMRI検査の施行不可
  • 現在保険適応外