クロザピン
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治療法の紹介
クロザピンとは
クロザピン(商品名:クロザリル)は、現在、販売されている統合失調症治療薬の中で「治療抵抗性」統合失調症に対して、唯一適応となっている薬剤です。
「治療抵抗性」とは2種類以上の治療薬を十分な容量使用しても一定の改善が得られない「反応性不良」もしくは副作用の出現などにより十分な量の抗精神病薬を使用できなかった「耐容性不良」の基準を満たす場合にそう呼ばれます。
統合失調症は100人に1人が発症すると言われており決して珍しい病気ではありません。統合失調症の方の20%から30%が先述した「治療抵抗性」だと言われています。
クロザピンは1958年に合成され1971年からヨーロッパで使用が始まりましたが、副作用で致命的となりうる無顆粒球症を起こすことが判明し、1975年には自主的に販売停止となりました。その後も定期的な検査を義務付けた上で一部の国で販売が継続されたことで、無顆粒球症発症の激減と有効性が再確認されるようになり、1989年よりアメリカで使用が再開となりました。
現在では世界100ヵ国以上の国で使用され、唯一の治療抵抗性統合失調症の治療薬、統合失調症治療の切り札として高い評価を得ています。日本でも少しずつ使用が増えていますが、欧米各国や以前より自国生産している中国などに比べてまだまだ少ないのが現状です。
私もクロザピンによって行動制限を解除できたり、退院や社会復帰につながった症例を多く経験しました。どうしても改善しない方にとって決定打になる可能性がありますので是非ご検討ください。
対象者 | 反応性不良(十分な薬物療法を行っても治りにくい)もしくは耐用性不良(副作用のために薬物療法を中止する必要がある)と診断された統合失調症の方 |
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留意点
クロザピン患者モニタリングサービス(CPMS)
病院・医療関係者・患者さんはCPMS(クロザピン患者モニタリングサービスの頭文字です)というシステムに登録を行うことが義務付けられています。
これは患者さんに対して適切な頻度で検査が行われ安全に使用されているかを、絶えず確認するためのものです。これによって顆粒球減少を発見し、適切な処置や薬剤中止などによって無顆粒球症発症を可能な限り回避するようにします。また、無顆粒球症を起こした場合は血液内科と連携して治療にあたる体制がとれていなければクロザピンを使用することは認められません。
他にも糖尿病内科医とのコンサルタントが可能かどうか、採血の結果が当日中に分かるようになっているかなど、病院の体制が適切かどうかをチェックするのもCPMSが行っています。
懸念される副作用 |
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治療の流れ
事前同意
クロザピンは重篤な合併症の危険があり、また使用に当たっての条件を満たさなければ使用できません。担当の医師より患者さまとご家族に治療の説明を行います。
説明に納得して頂き、同意が得られれば治療となります。
入院
治療に際しては必ず入院が必要になります。特に心臓に関する合併症は最初の3週間に発症しやすいため、この期間は必ず入院してもらいます。これは薬剤を中止しても同じです。
治療が順調に進み症状が落ち着いても、原則として18週間は入院が望ましいです。これは先述した無顆粒球症がこの時期に発症することが多いためです。
退院
採血の期間は開始から半年までは週1回ですが、半年後(26週後)には2週間に1回となります。退院はこの時期にお勧めしています。なお3週間以降は外泊などは可能です。